抄録
近年、高層ビルの風や地震外乱に対する不規則振動の制御問題が脚光を浴びている。実在のシステムを制御しようとすればその動特性を表す正確な数学モデルを構築することが強く要請される。特に柔軟構造物である高層ビルについては、振動のモードパラメータ(固有振動数、減衰比およびモード形)を正確に知ることが非常に重要である。本論文では高層ビルの制振問題の解決にあたって、5層のビルの縮尺モデルに対して、そのモードパラメータの同定を目的とする。パラメータの同定にあたっては、最近注目されているシステム同定法のひとつである部分空間同定法に着目し、それにより行っている。この手法はシステム制御の分野で基本的なモデルである状態空間モデルとしてシステムを同定するという特徴がある。同定された状態空間モデルより伝達関数の極、留数表現への変換法を示す。また、モードパラメータは極および留数より得られる。