抄録
線形時変状態空間確率システムの時変パラメータを予測する手法について,著者らはすでに提案しているが,本論文ではその予測アルゴリズムの改良と数値例による検証を行っている.部分空間同定法は,入出力データより構成されるマトリクスから,未知システムの拡大可観測マトリクスの列ベクトルにより張られる信号部分空間を同定し,その結果より状態空間モデルのシステムパラメータを同定するアルゴリズムであるが,本予測手法ではシステムパラメータの時間変化に伴う信号部分空間の変化を部分空間の基底の回転と捉え,その回転速度を求めることにより未来の信号部分空間の予測を行う.また,その際には変化のゆっくりとしたシステムを対象とし,回転速度を一定と見なすことができるという仮定を用いていた.このような手法に対し,本論文では,回転速度の高次微分値を一定と仮定するアルゴリズムを構築し,変化の早いシステムへの本手法の適用を検討している.またその性質と有効性は,幾つかのシステムを対象とした数値シミュレーションにより検討した.