抄録
運動機能を回復するためのリハビリテーションでは,理学(作業)療法士が対象部位の反力・反応や,患者の状態を考慮しながら,筋肉の運動状態や運動機能の回復状態に合わせて適切に行う必要がある.しかしながら,患者数に対して理学療法士の数は絶対的に少なく,過疎地域においてはその差はより顕著である.一方,このような現状を踏まえ,患者自身でリハビリテーションを行うための装置としてCPMやTEMといった装置が開発され利用されている.しかし,これらは機械的にリハビリパターン動作を繰り返すのみであり,筋肉の運動状態や運動機能の回復状態といったことまでは考慮していない.装置によるリハビリテーションを考慮した際に,現在のリハビリテーション動作が患者自身による能動的なものか受動的なものかの判定と,リハビリ部位の筋力状態に関して判定する必要がある.そこで本研究では,リハビリテーション中における患者の筋肉の運動状態や運動機能の回復状態を筋電位より調べることを目的とした.本研究では特に上腕動作の屈伸に関するリハビリテーションに着目し,上腕二頭筋と上腕三頭筋のそれぞれについて筋電位を調べた.その結果,屈伸動作中の筋肉の能動的・受動的動作を筋電位から判定し分離することができ,同時に筋肉に加わっている負荷の推定も可能であることを確認した.また,上腕二頭筋と上腕三頭筋の筋電位の変化より屈伸動作中の屈方向と伸方向の判定も可能であった.