抄録
生産現場では,特急ジョブの発生など,計画段階では予測が困難な数多くの不確定的要因が生じる.そのため当初のスケジュールにしたがう生産の継続が困難となり,スケジュールを変更せざるを得ない状況が頻発する.このような状況の下,計画段階で不確定的要因を積極的に考慮し,オンラインのスケジュール修正・変更をできる限り抑えることを目的としたプロアクティブなスケジューリング戦略(事前対応型スケジューリング)が研究されている.著者らはこれまでに,スケジュール遅延を仮想ジョブと呼ばれる架空のジョブによって吸収するスケジューリングの枠組みと方法を提案し,単一機械問題を対象として,それらの有用性を示した.本稿では,従来研究の拡張として,有限バッファをともなうフローショップ問題への適用を試みる.評価指標と仮想ジョブを挿入するためのアルゴリズムを提案する.数値シミュレーションでは予見スケジューリング(predictable scheduling)との比較実験を行い,提案手法の有効性を検討する.