システム制御情報学会 研究発表講演会講演論文集
第49回システム制御情報学会研究発表講演会
セッションID: 2B3-3
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Pickup and Delivery問題の数理計画モデルと遺伝的アルゴリズムによる解法
*野一色 学榊原 一紀渡邊 真也西川 郁子玉置 久
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抄録
近年,生産,物流あるいは旅客サービス・システムは,需要の多様化に伴いより複雑なものとなり,その計画・運用に関する問題(搬送計画問題)がますます重要視されてきている.従来搬送計画問題に対しては,AGV(無人搬送車)の搬送経路計画やエレベータの運行計画など,現実的な問題設定の下で様々な解法が提案されている一方で,これらを包括するモデルや解法構成に関する研究は少ない.筆者らは現実の様々な搬送計画問題を包括し得るようなモデルとしてVechile Routing Problem(VRP)の一般化に相当するPickup and Delivery Problem(PDP)を取り上げる.PDPは,VRPにおいて配送する品物(カスタマー)一つ一つの配送元(pickup)と配送先(delivery)を陽に考慮し,(a) pickupとdeliveryは同一の車で搬送されなくてはならない,(b) 車が巡る地点間の先行関係 (pickupはdeliveryの前に行われなくてはならない等),(c) 車両の容量,に関する制約を満たしつつ,(1) カスタマーをどの車に割当てるか,(2) 各車は割当てられたカスタマーをどの順番に処理するか,を決定する問題と捉えられる.                                 PDPに対しては,これまでに数理計画に基づく厳密解法が提案されている一方で,現実的な応用の観点から,許容時間内に良好な解を得るために局所探索法(Local Search: LS)やタブー探索法(Tabu Search: TS)をはじめとするメタヒューリスティクスの適用方法がいくつか提案されている.後者のメタヒューリスティクスに基づく研究では,探索空間に実行不可能な解に対応するもの(解表現)が含まれることを許した上で,近傍解が実行可能となるように摂動操作を工夫する,といった考えに基づいたものが多い.このような方法では,探索における近傍構造が複雑なものとなり,探索が効果的に行われない恐れがある.またこれらの研究は,LSやTSなどの(一つの解を逐次更新する)一点探索法の適用を前提としており,遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithms: GA)などの多点探索法の適用は考慮されていない.                     PDPにおいて特に決定(2)に着目した場合,制約(b)および(c)を満たす経路計画(実行可能計画,さらには良好な計画の作成)は容易ではない.そこで本研究では決定(2)の取り扱いに焦点を当てた解法を提案する.すなわち,車の台数を1台に限ったPDP(1-PDPと呼ぶ)について整数計画モデルに定式化すると共に,定式化に基づいたメタヒューリスティクスの構成を示す.提案する整数計画モデルにおいては,各地点間の隣接関係に着目した0-1の決定変数を導入し,これにより分枝限定法などの数理計画法の適用が可能となった.1-PDPに対しては,多点探索により効果的な求解を可能とするGAを適用する.1-PDPは制約(b)および(c)を考慮しない(すなわち緩和)した場合,巡回セールスマン問題(Traveling Salesman Problem: TSP)と見なすことができる.そこで,解表現(遺伝子表現)においてこれらの制約を陽に取り扱わずに,解表現から解(巡回路)へのマッピングにおいて制約を考慮する(つまり実行可能解を生む)といった解法を提案する.具体的には,解表現としてカスタマー番号を2組ずつ並べた文字列を用意する.マッピングに際しては,文字列が指し示す順にカスタマーを処理することを基本として,制約(b)を満たすようにカスタマーをpickupするかdeliveryするかを決定する.また制約(c)を満たさない場合には,対応するカスタマーの処理は制約(c)を満たすまで後回しするものとする.このような解法によって,TSPのために提案された種々の遺伝演算子をそのまま利用することが可能となった.                                         提案するGAについて,いくつかの例題を用いた計算機実験を行った.整数計画モデルに基づき商用の数理パッケージCPLEX9.0を適用したところ,カスタマー数=8程度の規模の問題に対して最適解が10時間程度で得られることが確認された.さらにカスタマー数を15, 25および50程度の例題に対し,TSに基づく手法との比較を行った.ここで用いたTSは,探索点の設計において制約(c)を緩和した問題を用い,制約(c)の違反量を評価値に組み込む,といった手法である.その結果,TSを用いた場合には,大規模な問題(カスタマー数=50)に対して実行可能解が必ずしも得られていない一方で,GAを用いた場合には良好な(最適解の12%程度の)準最適解が常に得られていることが確認された.
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© 2005 システム制御情報学会
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