抄録
日本では東京証券市場を中心にザラバという方式で注文約定処理が行われている。ザラバでは板の上に残された過去の注文と、現在到来した新しい注文とが合致したところで価格が決定する。株価変動の頻度分布は尖度が高いという事が良く知られており、価格変動の確率モデルとしてARCHモデルやGARCHモデルなどが提案されている。しかし、これらのモデルは価格のみを扱い、過去や現在の注文との関係を無視している。本報告では、到来する注文分布が価格変動に与える影響について調べる。実証分析を行い注文の到来確率を求める。それらを人工市場(U-Martシステム)を使ってシミュレートし、尖度の高い分布を示す株価変動が、どのようにして発生しているかを明らかにする。