抄録
製造業の現場ではスキルを持った社員が大量退職するいわゆる2007年問題が深刻になっている.これに対応するには,知識伝承のための職場での教育や知識移転を促進するような人事制度について新たな方策が必要である.教育の問題にせよ,人事制度の問題にせよ,施した施策の影響が目に見えるようになるのは何年も先のことである.我々は,このように「やってみなければわからない」問題について,エージェント・ベース・モデルによる大量かつ大規模なシミュレーションによる接近を試みている.
本稿では,製鉄プラントの保守点検作業現場における職員のスキルデータを使用し,これを初期値とした On the Job Training (OJT)による知識伝播と,個々のエージェント間のOJT活動が組織全体に及ぼすボトムアップな影響を分析する.