抄録
ディジタル信号処理の新しいパラダイムとして,サンプル値制御理論を用い,原信号のアナログ特性を考慮したディジタルフィルタ設計の手法が近年提案され,その有効性が示されている.その最適フィルタの特徴は,サンプラとホールドおよびディジタルフィルタによって,連続時間の線形位相特性,すなわち純粋な時間遅れを近似することである.この特性を利用して,本研究では,繰り返し制御器の時間遅れ要素にこのフィルタを用いることを提案する.時間遅れ要素は無限次元であり,その実装が難しいことを考えると,本提案手法は現実のシステムへの実装にふさわしい手法であると言える.また数値例によりこの手法の有効性を示す.