抄録
現実の問題を数理モデル化するにあたって,目的関数や制約関数が正確に推定できるとは限らず,モデルに不確実性が含まれている状況がしばしば起こる.このような状況に対処するため,近年,不確実性を含む数理計画問題や,それを解くためのアプローチに対する研究が盛んになされている.その中でも代表的ものがロバスト最適化である.ロバスト最適化とは,問題に含まれる不確実なデータがある与えられた集合(不確実性集合)に含まれるものと仮定し,その中で最悪の状況を想定して最適化を行うものである.このようなアプローチは,近年多くの研究者によって研究されており,様々な定式化手法が提案されている.本研究では,ある特殊な不確実性構造をもつ線形計画問題に対してロバスト最適化問題を考える.さらに,その問題に対して,Beckらの提案した非凸二次計画問題に対する強双対性の理論を適用することにより,ロバスト最適化問題が半正定値計画問題に変換できることを示す.また,その変換手法が,不確実性をもつ二次錐計画問題やある種のロバストNash均衡問題にも適用できることを示す.