抄録
破壊現象は,物体のトポロジを変化させる現象である.変形物体を対象とした多くのVRシステムでは有限要素モデルが用いられるが,トポロジ変化時に必要となる幾何形状と剛性マトリクスの再構築計算コストが高いために,実時間で仮想物体のトポロジ変化を扱うことは困難である.本研究では,有限要素モデルのトポロジ変化を実時間で扱うことを目指す.トポロジ変化時の再構築計算コストを削減するために,き裂先端領域近傍の局所領域のみの再構築計算を行う手法,および,実時間処理中にトポロジ変化を詳細に反映した反力提示を行うために,前処理段階で記録した多様なトポロジとユーザ操作パターンにおける反力を補正する手法を提案する.トポロジ変化時に,物体全体の再構築計算を行う従来法と提案手法による再構築時間を比較した結果,提案手法では再構築計算時間が削減されたことを確認した.さらに,反力補正の有効性を示すために,補正を行う場合と補正を行わない場合の誤差を比較した.結果,比較した多くのパターンで補正を行う場合の方が,補正を行わない場合に比べて誤差が小さくなることが確認された.