抄録
本研究は、中国の大都市の上海市に在住する小学生をもつ親へのインタビュー調査のデータを用いて、親の社会関係資本と教育戦略をテーマとするものである。その際、先行研究で主に取り上げられてきた社会階層だけではなく、居住地も重要な要因の一つとして検討されてきた。
社会関係資本は、子どもの教育に極めて重要な役割を果たしており、これまで、親の社会関係資本の階層差の存在については多くの研究がなされてきた。そこで本稿では、親の社会・経済的地位を加えて、居住地にも注目していく。分析結果としては、都心部においては、富裕層は、同質的な社会関係資本を維持しつつ、「結束型社会関係資本」を子どもの教育に最大限に活用しようとする姿勢がみられ、貧困層は、居住地の便益を活かし、「橋渡し型社会関係資本」の構築に努めていることがわかった。一方、近郊部においては、富裕層は、時間的余裕がないことから、近所に住む親族・親戚が積極的に関与する「結束型社会関係資本」の活用が見られ、貧困層は、社会階層と居住地の両方の面で不利な立場であるため、社会関係資本を子どもの教育に十分に活かすことができない現状が明らかになった。本稿は、それぞれの社会階層に属する親は、居住地の影響を受けながら各自の社会関係資本を構築しつつ、最終的にそれらの社会関係資本が子どもの教育に作用するというプロセスを検討した。その結果、社会関係資本の形成および活用には社会経済的地位のみならず、居住地の影響も見落とせないことを明らかにした。