脳卒中の外科
Online ISSN : 1880-4683
Print ISSN : 0914-5508
ISSN-L : 0914-5508
特集:動脈瘤クリッピング術の手術手技―原 著
前交通動脈瘤クリッピング術におけるrectal gyrusの一部切除は術後認知障害の原因となり得るか
山川 功太吉田 浩貴赤須 功田中 将大松崎 粛統北川 亮酒井 淳沼澤 真一伊藤 康信渡邉 貞義山本 拓史豊岡 輝繁和田 孝次郎森 健太郎
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 50 巻 2 号 p. 101-106

詳細
抄録

前交通動脈(AcomA)瘤のクリッピング術の際にrectal gyrusを切除することが,術後の認知障害をきたすか否かという問題は未解決である.今回われわれはこの問題について,瘤の展開の際にrectal gyrusを一部(約1cm)subpialに除去したAcomA瘤患者のデータを用いて検討した.全患者は同一術者による同一テクニック(supraorbital keyhole approach)を用いて治療された.連続63例のAcomA瘤患者のクリッピング術において,右(n=50)または左(n=13)のrectal gyrusの切除を行った.認知機能検査として改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)とMMSEを術直前と術後3カ月後に評価した.またBeckとHAMを遂行機能に関与するうつ状態を評価するため施行した.術後に脳梗塞や脳挫傷をきたした患者はいなかった.HDS-RとMMSEによる認知機能は術後に変化なく,BeckとHAMによるうつ病検査は有意に改善した.多変量解析では,手術側は術後の精神機能に関与していなかった.脳梗塞や脳挫傷の合併がなければ,rectal gyrusの部分的切除自体は認知機能やうつ状態に影響しないと考えられる.

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top