脳卒中の外科
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原  著
当施設における急性期バイパス術の変遷と治療成績
渡部 寿一進藤 孝一郎大里 俊明本庄 華織村木 岳史杉尾 啓徳櫻井 卓村橋 威夫野村 亮太立田 泰之麓 健太朗上山 憲司中村 博彦
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2022 年 50 巻 2 号 p. 124-129

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抄録

急性期バイパス手術のエビデンスは乏しく,適応に関しても確立されていない.われわれは,症例を選択し確実な手技を徹底すれば,良好な治療効果が得られることを過去に報告した.近年,①アテローム血栓症,②脳血流が対健側比70%程度以下,③内科治療を行っても症状が進行するか,あるいは皮質/皮質下の脳梗塞が拡大するもの,④発症から72時間程度以内で判断する,という基準で症例選択をしている.

基準③は,症状進行と梗塞拡大に関し,過去には“かつ”であったが,“あるいは”に変更した.上記に基づいて選択した症例の,近年の治療成績に関し報告する.2014年から2018年までの間に当院で急性期にSTA-MCAバイパス術を行った患者31例を検討した.比較対象として,過去(2002-2013年)の59例を検討した.自立歩行獲得率(mRS 0-3)は77.4%であった.一方で,2002-2013年の自立歩行獲得率は59.3%であった.過去と比較し,自立歩行の獲得では改善の傾向を示していた.NIHSSでは有意差がなく成績は変わりない結果となったが,急性期バイパスの症例数は増加しており,適応を吟味し,広げて早期に治療介入することで,同程度以上の成績で救える症例が増加したと考えられた.

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© 2022 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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