2022 年 50 巻 2 号 p. 130-135
脳幹部海綿状血管腫のうち,出血を繰り返し神経症状の悪化を認める例に対して,外科的切除術が適応となる.その際,脳幹の切開が不可避であるが,いずれの症例でも,小さな切開口から進入し,脳幹内部に存在する病変の最大限の摘出を機能温存とともに達成することが求められる.
2011年以降,当院では13例の脳幹部海綿状血管腫の摘出手術を行った.本報告では,そのうち第四脳室経由にてアプローチした7症例(橋5症例,延髄2症例,女性6名,平均年齢53.8歳)について術中所見ならびに結果を報告した.
手術アプローチは病変の中央部と脳幹表面から病変までの距離が最も浅い位置を結んだ,いわゆる“2-point method”で決定した.手術操作中は進入経路に関連する神経モニタリング(経頭蓋MEP,顔面神経モニタリング)を行い,神経機能保護に努めた.また,顕微鏡と異なる視軸を確保するべく神経内視鏡を 4 症例に併用して摘出手術を行った.
結果,1症例を除く6症例で病変が全摘出された.6症例で症状が改善した.病変が残存した1症例では,外転神経障害と顔面神経麻痺が遷延した.
脳幹部海綿状血管腫の手術摘出を行うための第四脳室経由アプローチは確立された方法であるが,特に大きな病変を小さな脳幹表面の切開から摘出する際,困難を伴う.本アプローチの利点と限界を熟知し,症例に合わせた手術戦略を練ることが重要と考える.