2022 年 50 巻 4 号 p. 307-312
頭蓋内軟膜動静脈瘻(pial arteriovenous fistula:pAVF)はまれな疾患で,頭蓋内血管奇形のうち1.6%程度と報告されている.流出静脈への強い血行力学的負荷により形成された静脈瘤は,mass effectから巣症状の原因となり,また致死的な頭蓋内出血につながる可能性があるため,治療を考慮する必要がある.われわれは症候性のpAVFに対し血管内治療と摘出術を行った1例を経験した.
症例は15歳,女性.頭痛精査で視野障害と右後頭葉に最大径53mmの巨大腫瘤を指摘された.各種精査を行い,右後大脳動脈をfeederとし,横静脈洞に流出する血栓化静脈瘤を伴うpAVFと診断した.mass effect除去および根治のため複合治療を行う方針とした.まず血管内治療を施行し,shunt pointを中心に塞栓術を行い,flow reductionは得られたが新たなshunt flowも出現した.翌日,開頭術では塞栓術の効果もあり安全に摘出できた.新たな脱落症状なく自宅退院し,病理所見では肉眼的にfeeder,drainerが確認でき,シャントポイントと合致する部分で弾性板の消失を認めていた.
pAVFの治療において血管内治療での報告が増えてきているが,特に静脈瘤によるmass effectを伴う症例に関しては,複合治療を行うことで安全に摘出することができる.