2022 年 50 巻 5 号 p. 357-364
twig-like middle cerebral artery(T-MCA)は稀少疾患であり,未解明な部分が多い.今回自験例のT-MCAをもとに,過去の文献を参照し,異常血管網の構造および無症候例の脳卒中発症の危険性について解析・検討を行った.
2008年から2020年の期間に8例(男性 4例,女性 4例,平均年齢50.1歳)のT-MCA(右側 5例,左側 3例)を経験した.無症候性が7例,一過性脳虚血発作で発症した症候性が1例であった.
放射線学的所見から,異常血管網に流入する動脈経路には,前大脳動脈からの経路と前脈絡叢動脈を含めた内頚動脈からの経路の2系統を認めた.この2系統の経路は,MCAの代表的奇形である副MCAおよび重複MCAとそれぞれ起始・走行様式が相似していた.
文献検索から特定し得た無症候例21例と自験7例の計28例の無症候性T-MCAを解析したところ,保存的治療となった26例のうち,その後の追跡で8例(30.8%)が脳卒中を生じた(一過性脳虚血発作1例,脳梗塞1例,脳出血2例,くも膜下出血4例).全例がT-MCAを有する病側半球での発症であった.
T-MCA は無症候であっても,脳卒中の危険性に留意して慎重に観察する必要がある.