脳卒中の外科
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総  説
最重症くも膜下出血(WFNS Grade V)に対する神経集中治療
小畑 仁司
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2022 年 50 巻 6 号 p. 474-481

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抄録

くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)は全身疾患である.重症例では中枢神経のみならず全身臓器の異常を伴うことが多く,脳動脈瘤根治術の前提として呼吸・循環の安定化とともに神経蘇生が必須である.

SAHの転帰不良の最大要因は,発症72時間以内の早期脳損傷(early brain injury:EBI)である.当施設では,WFNS Grade Vであっても瞳孔が散大固定していない75歳以下の患者に対して,EBIの軽減を目的としてただちに低体温療法を導入し,根治術を施行している.体表冷却により深部温33.5℃を3日間維持後,1℃/日以下で復温し,36℃に到達後のDay 7以降,遅発性脳虚血発症リスクの高いDay 14まで血管内冷却による常温管理を行う.この間,Neurocritical Care Societyの推奨に基づき,呼吸・循環,血糖,血管内容量,電解質などの評価と管理,およびシバリングの評価と治療,簡易持続脳波モニタリング(amplitude-integrated EEG)などを実施する.血管内冷却導入前後の比較で,38℃以上の発熱と脳梗塞出現頻度は有意に低下し,転帰良好(GR+MD)率は32%から55%と改善傾向がみられ,神経集中治療のもと実施する積極的な体温管理の有用性が示唆された.

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© 2022 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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