脳卒中の外科
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症  例
右内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤破裂によるくも膜下出血と左側頭葉脳内出血を同時に発症した1例
穂刈 正昭澤谷 亮佑新保 大輔浅岡 克行内田 和希高田 達郎安喰 稔板本 孝治
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2023 年 51 巻 2 号 p. 135-138

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抄録

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血に脳内出血を伴うことはよく経験されるが,動脈瘤の遠隔部に脳内出血を併発することはまれである.今回,右内頚動脈-後交通動脈分岐部(IC-PC)動脈瘤破裂によるくも膜下出血と左側頭葉脳内出血を同時に発症した1例を経験したため報告する.

症例は,73歳女性.頭痛と嘔吐,進行する意識障害を発症し搬送された.重度意識障害と瞳孔不同(右>左)を認め,頭部CTでびまん性のくも膜下出血と左脈絡裂と連続する左側頭葉の脳内出血を認めた.3D-CTAで3mm大の右IC-PC動脈瘤を認めたが,左側は内頚動脈に壁不整を認めるのみで明らかな動脈瘤を認めなかった.まず,左開頭を行って左内頚動脈の確認と左側頭葉の血腫除去を行ったが,動脈瘤は認めなかった.そのため,左側の閉頭後に右開頭を行い,右IC-PC動脈瘤が破裂瘤であることを確認してclippingを施行した.本症例の頭部単純CTは左内頚動脈瘤破裂を強く疑わせるものであったため,3D-CTA上は明らかな左内頚動脈瘤を認めなかったものの,左側からアプローチを先行したが,結果として脳内出血は動脈瘤と独立して発症したものであり,対側のアプローチが必要となった.くも膜下出血と同時に別の脳内出血を発症した症例は現在まで8例報告されているのみであり,本症例を加えてその機序について考察する.

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© 2023 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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