2023 年 51 巻 5 号 p. 411-416
内頚動脈終末部C1部の形成不全はきわめてまれである.今回われわれは,遺残原始血管網(twig-like networks:T-Ns)の脆弱性が動脈瘤の発生,破裂と,その後の増大につながったと考えられるC1形成不全の1例を経験したので報告する.
症例は66歳,男性,くも膜下出血,脳内出血と第3脳室閉塞による急性水頭症で発症した.脳血管撮影では,右内頚動脈は後交通動脈を分岐直後に2本の破格側副血管に分かれ,後交通動脈からの異常な分枝とともに中大脳動脈領域を灌流するT-Nsを形成し,脳動脈瘤はその内部に発生していた.術中所見では右C1は低形成で,右A1,M1近位部は存在したが側副血管を分枝後索状構造となり閉塞していた.動脈瘤はT-Nsに埋没し同定が困難であったが,術中脳血管撮影併用下でネッククリッピングを施行した.