脳卒中の外科
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症  例
後下小脳動脈に限局した解離性脳動脈瘤破裂に対してLVIS Jr.のoverlap stentingにより治療した1例
卯津羅 泰徳南都 昌孝宮本 淳一
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2023 年 51 巻 5 号 p. 417-422

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抄録

LVIS Jr.を用いたoverlap stentingで治療した後下小脳動脈(PICA)に限局した解離性脳動脈瘤破裂の1例を報告する.

症例は74歳の女性で,意識障害で発症し,当院へ救急搬送された.来院時WFNS grade IV,頭部CTでのくも膜下出血を認め,DSAで左後下小脳動脈のlateral medullary segmentに限局した動脈解離を認めた.紡錘形の解離性動脈瘤であり,解離部の血管径は3.0mmであった.大きさが小さくコイル塞栓による治療は困難と考えられ,母血管閉塞では脳幹部梗塞の回避が困難と判断した.そこで整流効果を期待してLVIS Jr.を2本用いたoverlap stentingを施行した.術後,一過性に嗄声を認めたが最終的にmRS:0で自宅へ退院した.術後のMRI画像では明らかな梗塞病変を認めなかった.術後28日目のDSAで動脈瘤の消失を確認し,術後3カ月時点でも再発を認めていない.

後下小脳動脈に限局した解離性動脈瘤は頭蓋内動脈瘤の0.5-2.2%とまれである.再破裂率は高く,deconstructive治療による合併症も珍しくない.近年は血管内治療の進歩により合併症が少ないとの報告もあるが,本症例では母血管径の細い紡錘形であったため,これまでの治療法では困難と考えられた.内頚動脈などでoverlap stentingによる整流効果を利用した治療法が報告されており,今回われわれはLVIS Jr.を用いたoverlap stentingを行った.短中期的には良好な結果を得ることができた.われわれが渉猟し得た範囲では,LVIS Jr.を用いたoverlap stentingによりPICAに限局した解離性脳動脈瘤を治療した症例の報告はない.

大きさの小さい紡錘形の,PICAに限局した解離性脳動脈瘤破裂に対し,overlap stentingは治療方法の選択肢の1つになり得る.

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© 2023 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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