2024 年 52 巻 3 号 p. 167-172
近年,高解像度の医療画像取得に加えて,数値流体力学(computational fluid dynamics:CFD)や数値構造力学(computational structural mechanics:CSM)による構造解析の併用により,さまざまな術前のシミュレーションを実臨床に応用できるようになってきた.コイル塞栓術では,理想的なマイクロカテーテル位置やコイル選択の検討,ステントサイズと留置部位のシミュレーションが可能となってきている.フローダイバーター治療の場合も,braided stent特有の伸長・短縮を予測できるようになり,高精度の治療戦略が立てられるようになっている.また,3D プリンターも有用で,頭蓋内ステントや Woven EndoBridge(WEB)留置のシミュレーションとトレーニングを患者ごとに行えるようになった.将来的には,こうしたシミュレーション技術を動脈瘤破裂や再治療の予測にも応用できるだけでなく,AI技術と組み合わせることで治療計画プログラムを構築することも可能と考える.CFDやCSM,3Dプリンターを活用した技術は,今後,新規デバイスのトレーニングや治療効果予測などの分野で,さらに発展すると考えられ,医工連携が重要な役割を担っていると考える.一方,ソフトウェアや3Dプリンター活用に対しての薬事承認(保険収載)とそのための適切な事業化が今後解決すべき課題といえる.