2024 年 52 巻 3 号 p. 203-209
もやもや病に対する直接血行再建術後においては,吻合直後より脳表静脈の赤色化(cortical venous reddening:CVR)を認めることが知られているが,動脈硬化性閉塞/狭窄病変に対する浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術(STA-MCA bypass)におけるCVRに関する報告は少ない.当施設で動脈硬化性の内頚動脈および中大脳動脈閉塞狭窄症に対してSTA-MCA bypassを行った29例を対象とし(男性21例,年齢中央値69歳),CVRの有無によりCVR群(3例),非CVR群(26例)に分類し,背景,治療成績について後方視的に検討を行った.2群間の比較では年齢,性別,動脈硬化因子,心疾患,腎機能,発症様式,バイパス開通率,術前後modified Rankin Scaleに有意差は認めなかった.術後の過灌流症候群〔CVR群 2例(67%),非CVR群 2例(7.7%),p=0.042〕および脳梗塞〔CVR群 3例(100%),非CVR群 1例(3.8%),p=0.001〕の発生率はCVR群で有意に高かった.CVR群における術後脳梗塞は全例で開頭術野と離れた部位に生じたが(遠隔部梗塞),非CVR群で遠隔部梗塞を認めた症例はなかった〔CVR群 3例(100%),非CVR群 0例(0%),p<0.001〕.動脈硬化性病変に対するSTA-MCA bypassにおいて,CVRと遠隔部梗塞との関連性が示唆され,CVRは動脈硬化性病変に対するSTA-MCA bypass術後の遠隔部梗塞の発生を予測する重要な所見である可能性がある.