2024 年 52 巻 6 号 p. 448-452
平均寿命の延長に伴い,高齢者の未破裂動脈瘤に対する治療介入の機会が増加している.しかし,開頭クリッピング術が高齢者の認知機能に与える影響についての検討は十分でなく,どのような患者には開頭術を控えるべきか,という点は不明確である.当院における成績と,術後認知機能低下の危険因子についての検討を報告する.当院で2018年から2022年までに,75歳以上の未破裂動脈瘤に対して開頭クリッピング術を行った97例を対象とした.術前と術後2週間以内のMMSEとHDS-R,およびそのいずれかが3点以上低下した例の危険因子を検討した.97例中,男性11例,女性86例,平均年齢78.4歳,動脈瘤サイズは平均5.9mm,部位は前大脳動脈,中大脳動脈,内頚動脈が約30%ずつ,後方循環が約6%であった.MMSEは術前平均27.1点,術後平均26.4点,HDS-Rは術前平均27.1点,術後平均26.4点であり,ともに有意な低下を認めなかった.糖尿病および術前modified Rankin Scale 1以上であることが術後認知機能低下の危険因子であった.高齢者未破裂瘤に対する治療介入の際は,単純に年齢のみでなく,術前の認知・身体機能や動脈硬化危険因子に留意して症例選択を行うことで,認知機能を損なうことなく安全に開頭クリッピング術を行える可能性が示唆された.