2024 年 52 巻 6 号 p. 440-447
脳動脈瘤治療で頻用される前頭側頭開頭術は,側頭筋の萎縮,骨萎縮,脱毛,異物突出,顔面神経麻痺など審美面に問題を生じることがある.当施設では開閉頭手技にわずかな工夫を加えることで,従来の開頭範囲を損なうことなく審美性の維持に努めている.主な工夫は次のとおりである.まず,皮膚切開部にエピネフリン入りの局所麻酔剤を用いることで,皮膚切開時の不要な出血の低減に努めている.次に骨膜・側頭筋に対しては,十分な開頭範囲を確保しつつ側頭筋の萎縮が目立つこめかみには操作を加えない切開デザインとし,骨膜や側頭筋に対して電気メスの使用を控えた愛護的な剝離操作を心がけている.開頭縁に対しては骨蝋の使用は控え,また閉創時には骨欠損部に対して開頭時に生じた骨粉を充塡し,開頭縁が露出しないように骨膜,側頭筋で間隙なく縫合する.
2017年7月から2023年11月の間にクリッピング術を施行した未破裂脳動脈瘤44例と破裂脳動脈瘤22例の計66症例を対象とした.CTを用いた陥凹の程度はexcellent 58例,good 6例,poor 2例であり,術前と比べて側頭筋と皮下組織の厚さ,チタンプレートを加味した皮下組織の厚さが維持されているほど審美面の維持が得られることが示唆された(p=0.0008,p=0.0046,p=0.0057).本手技は特別な操作を必要としないため経験の浅い脳神経外科医であっても実施可能であり,また汎用性も高く実施機会も維持できることから手術教育の観点からも有効である.