2025 年 53 巻 4 号 p. 242-247
遺残舌下神経動脈(persistent primitive hypoglossal artery: PPHA)は,胎生期遺残動脈の1つで,2番目に頻度が高い.今回,同側PPHAを有する症候性内頚動脈狭窄症に対して頚動脈内膜剝離術を施行した1例を経験したので報告する.症例は68歳,男性.左下肢脱力発作で近医を受診し,頚動脈エコーで右内頚動脈起始部の高度狭窄を指摘され,当院に紹介となった.頭部MRIでテント上下に多発する梗塞を認め,頚部MRAで右内頚動脈起始部に不安定プラークを認めた.血管造影で右内頚動脈起始部にNASCET 70%の狭窄を認め,また内頚動脈から後方に分岐し脳底動脈と吻合するPPHAがみられた.SEPおよび脳波,ABRによるモニタリング下に,内シャント遠位側をプラーク遠位端からPPHA分岐部の間に挿入し頚動脈内膜剝離術を施行した.術後神経脱落所見なく自宅退院となった.PPHAを有する内頚動脈狭窄症では,側副血行路やPPHAの分岐の高さなどに応じて,モニタリングや内シャント遠位の位置を症例ごとに検討することで安全な治療が可能となる.