抄録
情報化の進む現代社会において,ソフトウェアはインフラの重要な構成要素となっている.しかしながら,ソフトウェア開発プロジェクトでは今もなおコスト超過や納期遅れといった“失敗”が相次いでいる.失敗の原因の1つに「プロジェクト分析の不足」が挙げられる.プロジェクトの事後分析は人的・時間的なコストが掛かるため,分析に十分な時間を確保することが難しいのが現状である.そこで,本研究ではソフトウェア開発においてよく用いられるメールに着目し,そのやり取りを時系列上に表示する手法を提案する.これにより,従来のメトリクスグラフで把握していたプロジェクトの「状態」に加え,「現場の開発背景」を同時に俯瞰することが可能となる.本稿では手法の詳細と共に,実際の開発プロジェクトに本手法を適用した3つのケーススタディを紹介する.