2011 年 10 巻 p. 79-102
本研究はオーストラリア英語話者による日本語文のイントネーションに見られる母語の韻律の干渉を調査するものである。第二言語話者のイントネーションは単語レベルとフレーズレベルのそれぞれのレベルでの母語干渉の複雑に混ざり合ったものだと考えられる。初級後半レベルの学習者が日本語の文を読み上げた録音を元に、韻律のレベル別の考察を行った。第一部ではそれぞれのレベルにおいて典型的な誤りのパターンを挙げ、第二言語習得の観点から記述した。第二部では学習者のイントネーション曲線を音響的に測定し、母語話者のものと比較した。その結果、母語話者と同一のイントネーション曲線を保つことは必ずしも発音の評価基準に必要ではないが、日本語では単語レベルでの正しいピッチパターンが文レベルのピッチパターンを型作ってゆくため、学習者にその点を注意深く指導する必要があることがわかった。