2012 年 11 巻 p. 47-58
本研究は日本人英語学習者の英語音声文理解におけるプロソディー情報の影響を実験的手法により明らかにすることを目的とする.実験では,音声文のプロソディー情報と統語構造を故意に対立させた「統語-プロソディーミスマッチ文」を用い,音声を聞いた学習者が主語の選択において文の統語構造上正しい回答をするか,プロソディー情報に基づいた回答をするかを検証した.さらに,同様の文にローパスフィルタ処理をした音声文を用い,音韻情報が減退しプロソディー情報が強調された音声文においてこの結果がどのように変わるかを分析した.結果として,日本人英語学習者の音声文理解においてプロソディー情報が重要な役割を果たしていることが示されると同時に,学習到達度が高い被験者ほど音声文理解においてプロソディー情報だけではなく語彙情報を用いた統語構造判断を行っている可能性が示された.