2012 年 11 巻 p. 27-45
第一言語の文処理の研究においてはワーキングメモリが読解に様々な影響を及ぼすことが報告されている。本稿では、第二言語話者の日本語関係節処理に個人のワーキングメモリ許容量が影響するのかを論ずる。第二言語話者の主語、目的語関係節処理をDependency Locality Theory(依存関係の局所性の理論)とStructural Distance Hypothesis(構造距離仮説)に基づいて比較するとDLTを支持するという結果が得られた。第二言語話者をリーディング・スパン・テストで計ったワーキングメモリ許容量に基づいて二つのグループに分けると関係節文理解度ではグループ間の差異が主語関係節文にしか見られなかったが、読み時間では統計的に異なる結果が文中の異なる場所に見られた。従って、第二言語関係節処理においても個人のワーキングメモリが影響することが分かった。