Second Language
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研究論文
早期L2英語習得におけるコントロール文と繰り上げ文について
吉村 紀子中山 峰治藤森 敦之清水 敬也
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2016 年 15 巻 p. 53-76

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抄録

本研究は, 日本語を母語とする30名の高校生が英語のコントール文と繰り上げ文の空範疇の主語の先行詞を適切に解釈できるかどうかについて複数選択肢調査票を用いて実証的に調査し, 理論的に解明しようとする試みである.これらの構文は派生が異なる点から, 「基底生成」対「A-移動」に関して第二言語文法の習得過程をあぶり出すような成果が期待される.実験では, コントロール文のPROの先行詞選択において母語の子どもたちに見られるような「主語」対「目的語」に強い有意差が見られなかったのに対して, 繰り上げ文の主語解釈においては第一言語習得と同様に顕著な習得の遅れが明らかとなった.分析では, 日本語のコントール構文にもPRO主語が存在する点を踏まえ, 母語の文法知識が「拡大投射原理」(EPP) や「最少距離原理」(MDP) と共に第二言語の構造習得の手がかりとして役立つと主張する.一方, seem-toに類似した繰り上げ文が日本語に存在しないために A-移動の知識を適切に適用できない点に加えて, 「経験者」の介入の影響によって「局所性」(locality) が長距離解釈を妨げてしまうと示唆する.

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© 2016 日本第二言語習得学会
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