Second Language
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15 巻
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特別寄稿
研究論文
  • 久米 啓介
    2016 年 15 巻 p. 31-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー

    第二言語 (L2) としての英語の学習者は冠詞の選択において誤りを犯すことは広く知られているが, 近年の研究 (Ionin, Ko, & Wexler, 2004; Ko, Ionin, & Wexler, 2010ほか) では, L2英語学習者の冠詞の選択に関する誤用はランダムに起こるのではなく, 定性 (definiteness), 特定性 (specificity), 分割性 (partitivity) といった普遍的意味素性 (universal semantic feature) によって引き起こされていると考えられている.本研究は, これらの意味素性の中でも, とりわけ日本語を母語 (L1) とするL2英語学習者を対象とした研究がない「分割性」に重点を置き, Ko et al. (2010) と同様の研究材料 (筆記誘因タスク) を使用し, L1日本語L2英語学習者を対象にその影響を検証した.実験結果は, 分割性の日本語話者への影響を示唆するものであり, 英語冠詞の選択においてL2学習者がUniversal Grammarに規定されているとされる意味素性にアクセスすることにより誤用が起きるのだとする Ko et al. (2010) 等の先行研究の主張を支持するものであった.しかしながら, 併せて検証した特定性の影響が, 分割性の影響に比べてより明確であること, つまり, 両意味素性はL2英語学習者の冠詞の選択に影響を及ぼすものの, 影響には差があることがわかった.これは, L2学習者が英語冠詞を習得する際に, 分割性に比べ特定性がL2英語学習者により強い影響を及ぼす段階がある可能性を示唆していると考える.そして, 特定性の影響がより強く残る原因は, 文脈によっては, 与えられた情報を頼りにその値を決定することが分割性に比べ難しくなるため, 学習者が当該素性と英語冠詞の選択が関連していないということを学習するのに必要な間接的否定証拠を利用しにくいからであると主張する.

  • 吉村 紀子, 中山 峰治 , 藤森 敦之 , 清水 敬也
    2016 年 15 巻 p. 53-76
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー

    本研究は, 日本語を母語とする30名の高校生が英語のコントール文と繰り上げ文の空範疇の主語の先行詞を適切に解釈できるかどうかについて複数選択肢調査票を用いて実証的に調査し, 理論的に解明しようとする試みである.これらの構文は派生が異なる点から, 「基底生成」対「A-移動」に関して第二言語文法の習得過程をあぶり出すような成果が期待される.実験では, コントロール文のPROの先行詞選択において母語の子どもたちに見られるような「主語」対「目的語」に強い有意差が見られなかったのに対して, 繰り上げ文の主語解釈においては第一言語習得と同様に顕著な習得の遅れが明らかとなった.分析では, 日本語のコントール構文にもPRO主語が存在する点を踏まえ, 母語の文法知識が「拡大投射原理」(EPP) や「最少距離原理」(MDP) と共に第二言語の構造習得の手がかりとして役立つと主張する.一方, seem-toに類似した繰り上げ文が日本語に存在しないために A-移動の知識を適切に適用できない点に加えて, 「経験者」の介入の影響によって「局所性」(locality) が長距離解釈を妨げてしまうと示唆する.

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