Second Language
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特別寄稿
生成文法理論に基づくSLAリサーチの可能性
―制約・知識からデータ・教育へ―
アラン ジャフス
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2018 年 16 巻 p. 19-38

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抄録

本稿では,過去10年間の生成文法理論に基づく第二言語習得(SLA)研究を概観することから始める。文処理研究(e.g., Juffs & Rodríguez, 2014)や形態素処理研究(e.g., Clahsen et al, 2010; Cunnings, 2016; Diependale et al., 2011)の主要な発見や方法論に焦点を当て,これまで問題にされてきた形式的・理論的なSLA研究における疑問(例えば, 普遍文法へのアクセス,表層的な処理や形態素を無視してしまうといった問題)の多くは,成人学習者が時間をかけてインプットに触れることにより,母語話者の言語知識に近づいていくと考えることで解決できると提案する。しかしながら,このようなアプローチが広く応用言語学との関連で捉えられるためには,言語理論に基づくSLA研究が言語の制約や知識を扱うだけでなく,教育の場面において学習者が実際に何を理解し何を産出するのか,その経年的な推移も説明しなくてはならない。そのため,ここではピッツバーグ大学の英語研究センターで収集したコーパスデータの研究を紹介する。これは,(理論)言語学の見識を踏まえたコーパスデータの研究であり,インプットにおける頻度や卓越性が言語習得の決定的な要因であると考える研究者が大多数を占める分野において必要とされるものである。集中英語プログラムに参加した学習者を対象として,語彙,音韻,形態,および統語の発達を論じ,詳細かつ注意深いコーパスデータの言語分析が,SLA研究にとって,また教育者にとっても同様に有益であることを示す。

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© 2018 日本第二言語習得学会
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