2018 年 17 巻 p. 31-48
本研究は、日本語を母語とする初級レベル英語学習者の間で観察される「目的語脱落」と呼ばれる文法的な誤りの原因を探ることを目的とする。これまでの研究(例えば、Wakabayashi & Negishi, 2003)では、英語学習者の間で義務的な目的語が頻繁に脱落することが報告されているものの、その誤りの原因については、未だ明確な科学的な検証がなされていないのが現状である。本研究では、強制選択課題(Jiang & Haryu, 2014, 2016; Noble et al., 2011)を用いて実験を行った結果、日本語母語話者は,項が1つだけ含まれる文(例えば,the man and the woman aregorpingもしくは「男の人と女の人がチモっている」)に対して,母語(日本語)と第二言語(英語)で異なる解釈を与えることが明らかになった.この実験結果から,母語である日本語からの転移は目的語脱落に関与していないことが示唆された。