2018 年 17 巻 p. 5-27
本稿は、バイリンガルのメンタル・レキシコンの言語を区別しない性質が、L2の文処理に与える影響を考察するものである。語彙処理の遅れや言語横断的な影響がL2とL1の文処理の相違につながるのかどうかを検証するために行われてきた、性の一致と統語構造の構築に関するL2処理研究を概観する。L2の語彙処理の遅れは、L2の文処理における統語構造の効果を遅らせたり弱めたりする。加えて、言語をまたぐ語彙的影響が、L2において、L1の文処理とは異なるパターンを生む。本稿では、「語彙的ボトルネック仮説」の仮定や予測を解説し、その洞察が、現在のL2文処理の諸モデルにどのように組み込まれうるのかを考察する。