2024 年 23 巻 p. 55-76
動的文法理論は, 言語発達の移行過程と習得結果は途中段階の文法の影響を受けるので, Chomsky (1968, 1986) などの「瞬時獲得モデル」はその特性を正しく説明できないと主張する.まず, 動的理論による習得モデルを概説し, 初期段階にはない規則や構文と文法拡張の具体例について解説する.次に, 第二言語習得においてもこの理論が有効であることを示すために, L2話者の日本語の文末表現の誤用の問題を検討する.L2話者の誤用が, 母語のL1文法に関わらず, 初期段階に観察されること, その後の発達過程で, 中級レベルではL1文法の特性によって習得結果が異なることを示し, 言語獲得の移行過程を理論に組み込んだ動的習得モデルが有望であることを示唆する2.