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特別寄稿「2024年度秋季研究大会」
複雑系理論から「第二言語学習」を考える:15年間のライティング研究からの教訓
新多 了
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2025 年 24 巻 p. 3-23

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抄録

言語は, 私たちの文化的, 社会的, 心理的な側面と深く結びつき, これらが絶えず相互作用する中で, 時間の経過とともにダイナミックに変化する.中でも第二言語学習は, 異なる母語, 経験, 性格, 動機づけ, さらには異なる学習目標を持つ学習者が, 多様な環境で取り組む複雑なプロセスである.複雑系理論は, 学問分野間の壁を越え, 分野超越的な視点から第二言語学習を再考・再検討するための理論的枠組みを提供する.本稿では, 複雑系理論の視点から, 第二言語学習とは何か, どのようにして学習は進むのか, また同じ教育環境において学習が進む人と進まない人がいる理由について考える.まず, 「複雑系」とは何か, その特徴と現象について説明する.次に, 著者らが15年間にわたり行ってきた研究プロジェクトを紹介する.このプロジェクトでは, ライティングタスクのくり返しを通じて, 大学生の第二言語ライティング能力がどのように発達するか調査してきた.これまでに, 600名以上の大学生から18,000件以上の英語ライティングデータを収集している.このプロジェクトから得られた研究成果は, 大きく2つの側面に集約できる.一つは, 第二言語ライティング能力の長期的発達, もう一つは学習者心理, 特にエージェンシーの変化に関するものである.前者では, タスクのくり返しが第二言語ライティング能力の発達にどのように影響するかを調査し, 「相転移」の条件や長期的な発達パタンを特定した.後者では, エージェンシーの変化が第二言語ライティングシステムとどのように相互作用するかを調査し, 英語学習に対する主体的な態度が第二言語ライティング能力の発達に与える影響について様々な知見を得た.この研究プロジェクトで得られた教訓をふまえ, 第二言語学習を新たな視点から考察する.

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© 2025 日本第二言語習得学会
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