Second Language
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研究論文
第二言語としての英語における形態統語的違反に対する敏感度
佐藤 美香子クラウディア フェルサー
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2010 年 9 巻 p. 101-118

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抄録

本研究では,異なる母語を持ち,第二言語としての英語 (ESL)を学ぶ学習者が,第二言語処理において主語・動詞間の一致違反や格違反にどの程度敏感かを調査する.ドイツ語,日本語,中国語をそれぞれ母語とする熟達したESL学習者グループと英語母語話者グループは,speeded grammaticality judgement課題と時間制限のない文完成課題に参加した.学習者グループは,時間制限のない課題において当該文法現象の両方に関して優れた知識を持っていることを示したにもかかわらず,speeded grammaticality judgement課題においては英語母語話者グループと異なり,格違反に比べて一致違反に対してより低い敏感性を示した.この違いは,学習者の母語に関わりなく観察された.本研究による発見は,学習者が経験する困難性としてしばしば報告される動詞の屈折形態に関する問題は,既存の仮説に表されるような,言語産出に特有のマッピング障害を反映しているのではなく,言語理解にも見られる困難性であることを示している.また,第二言語の形態統語的処理における母語の影響の役割は,これまで論じられてきたよりもさらに限られたものであることが示唆される.

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© 2010 日本第二言語習得学会
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