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研究論文
L2習得における類義語の使い分けの学習:複数のことばの意味関係理解の定量的可視化の試み
佐治 伸郎梶田 祐次今井 むつみ
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2010 年 9 巻 p. 83-100

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抄録

本研究はL2学習者がL2における複数の動詞の意味関係をどの様に習得するのか,またその習得の際に学習者の持つ母語の語彙知識がどの様に影響を与えるのかを実験的手法を用い,定量的に明らかにすることを目的とする.実験では,中国語母語話者,日本語及び韓国語を母語とする中国語学習者に,様々な様態でモノを持つ動作のビデオを提示し,中国語の「持つ」系動詞を産出してもらった.同時に,学習者の母語による名づけパターンを見るため、中国語学習者ではない別の日本語及び韓国語の母語話者にも,同じビデオに対してそれぞれの母語の動詞を産出してもらった.分析では,中国語母語話者及び学習者がこれらのビデオをどの様な中国語動詞を用いて名づけしたのか多変量解析的手法を用いて比較した.更に学習者に関しては,学習者の中国語の使い分けのパターンと,学習者の母語である日本語/韓国語動詞による名づけのパターンがどの様に関連しているか,比較分析を行った.その結果,学習者にとってL2における語の意味関係の理解は母語話者の理解と大きく異なること,更に学習者の語の使い分けには学習者の母語の影響が認められ,特に学習者は語を使い分けるに際し自らの母語における汎用的な語(日本語の「持つ」や韓国語の“teulda”の様な語)の意味をL2の汎用的な語(中国語の“na”の様な語)に転用し,より広い範囲のビデオに用いる傾向があることを明らかにした.

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© 2010 日本第二言語習得学会
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