物理探査
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論文
地震波干渉法による地下構造イメージング技術の実用化にむけた実験的研究
白石 和也尾西 恭亮伊東 俊一郎山中 義彰相澤 隆生松岡 俊文
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2008 年 61 巻 2 号 p. 101-110

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抄録

 地震波干渉法は,異なる受振器で同時観測された地震トレースの相互相関を取ることにより,一方を仮想的な震源,他方を受振器として観測したのに対応する擬似的な地震記録を合成することができる。これまでノイズと考えられてきた背景雑震動を信号として利用することを可能にする画期的なデータ処理技術として注目を集めている。本手法の最大の特徴は,雑震動の受動観測と人口制御震源を用いた観測のいずれの場合にも,設置した受振器の数だけの擬似的なショット記録を合成できる点にあり,相互相関処理によって合成された記録は従来のデータ処理プロセスに則って地下構造の可視化が可能である。本研究では,地震波干渉法による地下構造探査の実用化に向けて,山岳地域において透過波記録と反射波記録の関係を利用した二種類の現場実験を行った。一つ目の実験は,雑震動の受動的観測記録から地下探査を行う地震波干渉法の理論を実証するための実験である。理論的環境を再現するため,対象地域に存在するトンネル内を移動する打撃型震源およびトラック走行を震動源として利用し,斜面上に設置した受振器群により地中の波動場を観測,それらの記録に対して地震波干渉法を適用して地下構造のイメージングを行う。その結果,地質性状および反射法地震探査の結果に対応する重合断面が得られ,受動的観測記録を利用した地下構造調査の高い可能性を示す。二つ目の実験は,地震探査において震源の配置に何らかの制約を受ける場合,地震波干渉法が有効な探査法に成り得るかどうかを検討するための実験である。地表に偏在する発破震源を利用し,発震記録を透過波記録として利用して本手法を適用する。偏在する少数の震源からの地下構造探査が可能であることを確認できたことは実用上とても重要な結果である。本論文では,これらの実験を通じて地震波干渉法が今後幅広い分野で有効な探査手法と成ることを示す。

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© 2008 社団法人 物理探査学会
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