物理探査
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論文
地震波干渉法理論に基づく SPAC 法の再検討
横井 俊明Sos Margaryan
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2008 年 61 巻 2 号 p. 87-99

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抄録

 本稿では,微動アレイ探査に用いられる SPAC 法を,特に複素コヒーレンス関数の方位平均の要不要を中心として,近年注目されている地震波干渉法に基づくグリーン関数の再構築の理論と野外観測の結果に基づいて再検討し,以下を明らかにした。
 先ず, SPAC 法と地震波干渉法に基づくグリーン関数の再構築の理論は,水平成層構造に対する極の寄与の定式化を通じて,相互にほぼ完全に一致する。唯一の例外は,前者では必須である複素コヒーレンス関数の方位平均が後者では不要となる事である。次に,都市内及びその近郊では微動のパワーの方位依存性が地震波干渉法の理論に適合する程度に穏やかで,複素コヒーレンス関数の方位平均が不要となる可能性がある。ただし,これは微動パワーの方位依存性の強弱及び許容する誤差の範囲と合わせて検討されるべきである。
 さらに, SPAC 法に関する次のような展望が新たに見出された。例えば,方位平均をしない SPAC 法による二・三次元の速度構造探査の可能性,二つのモードが混在する場合に位相速度を分離できる可能性,また,水平成分観測により分散関係とは独立に速度構造に関する新たな情報源となる係数が見出せる等が挙げられる。

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© 2008 社団法人 物理探査学会
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