物理探査
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論文
フィールドでの観測実データを用いた地震波干渉法の適用条件に関する検討
相澤 隆生山中 義彰伊東 俊一郎木村 俊則尾西 恭亮松岡 俊文
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2008 年 61 巻 2 号 p. 121-132

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抄録

 地震波干渉法は,2点間で観測された地震記録の相互相関処理により,一方を震源とし,他方を受振点とする擬似的な合成地震記録を得ることができる手法である。これは従来の測定ではノイズとされていた雑振動を信号とした探査を可能にする手法として近年注目を浴びている。本手法を利用すれば,従来の反射法地震探査の測定に不可欠であった人工震源を用いずに,例えば道路を走行する車の振動や列車の走行振動,あるいは微小地震などの自然雑振動から地下構造の可視化か可能となる。
 我々は本手法の適用性を検討するために,いくつかの条件下での現場試験とデータ解析を実施した。その結果,以下のことが明らかになった。
 1) 山岳地帯尾根部における沢部発破の観測例では,受振点を取り囲むように震源を配置できた場合は,反射波の連続性が良く振幅も大きい傾向が認められた。2)急傾斜な道路法面におけるS波発震の観測例では,測線上 8 箇所の全ての震源データを使用することにより,測線上での擬似ショット記録を再現することができた。3)高速道路高架橋の橋脚付近での自動車走行振動の観測例では,30分間の測定時間であったため重合には至らなかったが,擬似ショット記録では S 波初動及び後続波の波群が認められた。これより,直線上に発震点が分布している場合の測定でも地震波干渉法の適用が可能となることが分かった。4)海岸地帯での波浪による雑震動の観測例では,測線に平行する道路からの車両走行振動と波浪振動とを区別してはいないが,振幅の大きな歩行ノイズを除くことにより擬似ショット記録の品質が向上した。5)能登半島地震の余震の観測例では,余震記録から反射構造が求められた。
 以上の結果より,地震波干渉法を適用することで,少ない発震点しか確保できない場合や,自動車の走行振動がある場合でも反射法地震探査の実現が可能であることが分かった。また,自然の雑振動である波浪や自然地震を振動源として利用する方法も有効であることが分かった。

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© 2008 社団法人 物理探査学会
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