物理探査
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解説
地震波干渉法によるグリーン関数合成と地下構造イメージング
松岡 俊文白石 和也
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2008 年 61 巻 2 号 p. 133-144

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抄録

 本稿では,地震波干渉法 (Seismic Interferometry) の理論について数値シミュレーションを用いて具体例とともに概説する。地震波干渉法は,異なる受振点で観測された地震波形の相互相関により,あたかもひとつの受振点位置を仮想的な震源として他の受振点で観測を行ったような地震波形を合成することができる。これまで従来型地震探査ではノイズと考えられてきた地中の震動を信号として利用できるほか,人工的な震源を用いた探査においても観測環境に合わせた震源受振点配置によって地下探査を行うことができる,今後広い分野で応用可能な画期的なデータ処理技術である。
 グリーン関数合成式は相反定理と時間反転不変の原理に基づいて導出される。ここではまず,音響波動場における導出過程と音響波動場および弾性波動場における地震波干渉法の基本式を示す。次に,数値シミュレーションによる例を用いて,地震波干渉法によるグリーン関数合成について具体的に示す。波形合成においては停留位相が重要な概念となり,これは地震波干渉法を利用した地下調査において震源受振点の配置を計画する際に役立つ概念である。また,地震波干渉法では観測に用いた受振器数に対応する擬似ショット記録を合成することができるので,この合成記録に対してデータ処理を施すことで地下構造の可視化や種々の解析が可能である。最後に,地中のランダムな震動観測記録に対して地震波干渉法を適用して地下構造をイメージングするシミュレーション例を示す。今後,地震波干渉法が環境や対象に応じた工夫を凝らしながら活用されていくことを期待する。

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© 2008 社団法人 物理探査学会
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