物理探査
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論説
2 周波数のマルチビームソナーで何がわかるか
─新たな広域熱水探査ツールの可能性について─
棚橋 道郎上田 哲士近藤 六夫梶 琢
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2014 年 67 巻 1 号 p. 17-24

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抄録

  マルチビームソナー (Multi Beam Echo Sounder: MBES) による海底地形調査は,海底資源調査や科学調査,および海洋土木調査など幅広い分野で利用されており,海底地形の特徴を理解する上で欠かせない調査機器となっている。そして最近では,信号処理技術の飛躍的な発展により,MBESによって水中音響に関する情報も利用できるようになりつつある。このような技術革新を踏まえ,筆者等は,MBESによる水中音響情報によって,沖縄トラフ中部海域の海底熱水系が,海底から高さ約1,000mに達する大規模な水中音響異常を伴うことを明らかにし,新たな探査ツールとしての可能性を追求してきた。本稿では初めに,このような大規模な水中音響異常の検出例をいくつか紹介する。次に,その探査能力をさらに発展させ,2周波数のMBESを利用した水中音響調査によって,二酸化炭素の液滴 (droplet) に起因すると考えられる大規模な散乱異常と,ブラックスモークのような熱水プルームによる散乱異常の検出が可能であることを示す。これらの検討結果を踏まえ,沖縄トラフのような二酸化炭素に富む海底熱水系をターゲットとした,新たな広域探査手法を提案する。今回報告する成果は,経済産業省資源エネルギー庁の委託業務によるものである。

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© 2014 社団法人 物理探査学会
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