物理探査
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論説
水文情報に基づく地中熱ポテンシャル評価
内田 洋平吉岡 真弓シュレスタ ガウラブ
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2014 年 67 巻 1 号 p. 25-36

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抄録

  地中熱利用ヒートポンプシステムは,1970年代に起きたオイルショックを契機として,欧米諸国が積極的に導入・普及を進めたことはよく知られている。しかし,日本では競合する空気熱源のシステムに比べ初期コストが高く,また諸外国と比べても導入コストが高いために,地中熱の利用がなかなか普及していないのが実状である。その原因の一つとして,日本と欧米諸国における第四紀層の層厚の違いが挙げられる。
  日本における大都市の地形・地質の多くは堆積平野や堆積盆地であり,欧米諸国と比べて第四紀層が厚く堆積している。例えば,日本で最大規模の関東平野では,その第四紀層の最大層厚は3000m以上と推定されている。この第四紀層の透水係数は高く,優良な帯水層を形成している。
  地下の温度は,地表面温度と地殻熱流量だけではなく,様々な要因によって変化する。従来の地熱分野では,地表面温度と孔底温度のデータから温度勾配を求め,熱伝導率との積から地殻熱流量を求めてきた。しかし,実際の地下の温度分布は地下水の流れによる熱移流の影響を強く受けており,その分布には大きな偏りがある。本稿では,地下水の流れと地下温度構造の関係を考慮した,水文情報に基づく地中熱ポテンシャル評価に関する研究事例について紹介する。

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© 2014 社団法人 物理探査学会
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