抄録
土木分野において,弾性波探査(屈折法地震探査)法は,古くから重要な地質調査法の一つとして広く利用され,特にトンネル建設に関する重要な地質調査技術として適用されてきた。一方で,トンネルが線状構造物である故の難しさも伴い,施工において事前地質調査と施工中の地質状況が相違するケースや,設計支保パターンが施工支保パターンと一致しないケースが以前から認められてきた。これらの要因については,地質調査,地質解釈,設計,施工の各工程の様々な問題を内包しているものと考えられてきた。弾性波探査においても,制約条件や測定上あるいは解析上の適用限界を踏まえて,探査計画の立案や測定作業を行う必要があるが,建設実務で直面する様々な課題に対して,各調査会社の経験や知識・ノウハウによって対応しているのが実状である。そのような背景と近年の調査機器・解析技術の技術革新もあり,(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下,鉄道・運輸機構と称する)と(公社)物理探査学会は平成21年から平成23年度までの間,弾性波探査による調査計画の立案からとりまとめまでの一連の標準的な手順を定めた,「トンネル弾性波探査マニュアル(案)」を作成した。
本稿では,本マニュアルを実際の業務に適用した事例として,鉄道トンネルを対象とした物理探査業務(九州新幹線,西九州ルート)について報告する。