2019 年 72 巻 p. 101-110
東北地方太平洋沖地震津波で甚大な被害が発生した岩手県陸前高田市において地震時の揺れやすさを把握するためのS波速度構造探査を目的として微動観測を実施した。78地点の単点微動観測によって微動のH/Vのピーク周期から基盤の深さ分布を面的に把握し,14地点の極小アレイ微動観測によって表層地盤のS波速度分布を把握した。その結果,平野部の北から南にかけてH/Vピーク周期が長くなり,東から西にかけてH/Vピーク周期が長くなり,気仙川を越えると急に短くなっていた。よって,北から南にかけては岩盤が次第に深くなり,西から東にかけては中央付近の基盤が深く両端が浅い,お椀型の構造をしていると推測される。この結果は千田ほか(1984)の地質断面図と類似していた。約40 m程度の基盤深度を示す場所では,大きなサイズの微動アレイと極小微動アレイの観測結果を併用すれば,千田ほか(1984)の地質断面図と整合した結果を示す。近傍の極小アレイ観測から求めた構造を参照して単点観測のH/Vに基づいてS波速度構造を補完した。単点観測とアレイ観測を併用した微動探査から得られる2次元浅部S波速度構造も千田ほか(1984)の地質断面図を比較しても類似する結果となった。