九重山とは,大分県に位置する火山連山の総称である。その中でも星生山の北東に位置する硫黄山は,1995年に水蒸気爆発が発生しており,九重山の中で唯一噴煙を出し続けている火山である。2016年4月16日に起きた熊本地震とその余震は,九重山への影響も少なからずあると予測できる。そこで本研究では,合成開口レーダーの応用技術である干渉SAR解析と時系列解析(SBAS法)を用いて,九重山全体の地表変動の推定と変動メカニズムの考察を行った。解析には,2014年8月28日から2016年11月14日の間に取得されたALOS-2データ17シーンを用いた。
解析の結果,解析期間内では硫黄山を除く九重山とその周辺で大きな変動は確認できなかった。しかし,硫黄山において,2016年熊本地震前の期間(2014年8月18日から2016年2月25日)では,沈下変動が観測され,2016年熊本地震直後の期間(2016年4月18日から2016年6月13日)は,変動傾向に変化が見られ,特に硫黄山では大規模な隆起変動が観測された。しかし,地震後余震が十分少なくなった期間(2016年6月13日以降)では,再び地震前と同様の変動が推定され,長期的に見ると,硫黄山では,地震前後で変動傾向に顕著な変化は見られなかった。
さらに本研究では,硫黄山の地表変動のメカニズムについて考察するため,地殻変動の解析的なモデルを用い,圧力源の位置(緯度,経度,深さ)と体積変化量の推定を行った。その結果,熊本地震前および地震後余震が少なくなった期間の圧力源の深さは,地下浅部の水蒸気だまりによるものと考えられる。しかし,地震直後の隆起は,地震前後の変動に比べ深い位置に圧力源が存在している可能性がある。