物理探査
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論説
日本の地震探査100年の歩み
太田 陽一
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2020 年 73 巻 p. 255-266

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抄録

我が国における地震探査100年の歩みを振り返るにあたり,石油・天然ガス資源探査の有力な手法である反射法地震探査について改めて現在確立されている調査方法を確認する。日本鉱業株式会社により実施された石油探査として初めて成果を上げた昭和15(1940)年秋田県八郎潟西岸の払戸村での調査結果について参照し,調査地近傍で昭和60(1985)年に実施された3次元調査結果と比較した。太平洋戦争中や戦後の地震探査技術の進歩は,日本政府の石油政策に深い関りがあることから,その政策の歴史や変遷と地震探査技術について述べる。戦後10年程度はGHQによる国産原油の探鉱開発促進政策により海外の最新調査機器が導入され,昭和30(1955)年に開始された政府の石油資源総合開発5カ年計画(第1次~8次まで約45年間)において国産原油確保のための探鉱調査が継続的に進められ,その探鉱対象の変遷(陸域においては浅部複雑構造から深部の大構造へ,海域においては大陸棚から大水深更には海陸境界地域)に対応すべく,地震探査の現地調査技術(震源,受振器,探鉱機,調査方法等)や処理解析技術が発展した。特に昭和40(1965)年代後半からの探鉱機のデジタル化は,その後のデジタルテレメトリ化により1000チャネルを超える多チャネルデータ取得が可能となった結果,長大展開・長大測線調査や3次元調査が実施可能となった。大量のデータを効率よく処理解析するソフトウェアの開発も進められ,また電子計算機の高性能化とともに,地下地質構造を立体的に把握できる3次元データボリュームの可視化技術も発展し,地下地質構造推定精度が格段に向上した。地震探査技術は石油天然ガス資源という大きな経済価値を生む探査手法として発展してきたが,地震防災や二酸化炭素地中貯留等,資源探査以外の分野への適用をより積極的に行う必要があろう。

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© 2020 社団法人 物理探査学会
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