人間社会は様々な産業において海洋を利用してきたが,顕著な環境変動が広がり,海洋生態系がもつ復元力の許容限界を越えようとしている。海洋環境を持続的に利用するためには,現状を知るための調査観測と人間活動による環境への影響を的確に評価し,適切に管理するための計画と運用体制が必要である。環境影響評価および環境モニタリングはその要となる技術である。生物群集と生態系は,構成要素が多様かつ複雑に連携しながら環境条件に応じた地域特性を維持している。格段に進歩した分子遺伝学の知識,進歩したシークエンス技術やメタゲノム解析の手法,また,カメラのデジタル化と解像度の向上および小型化などは,それまで試料採取と観察記載に重きをおいてきた生物・微生物の調査とモニタリングの様相を大きく転換した。より優れた機器と手法の導入は,適切な環境管理の運用と持続的な海洋環境と資源の利用を牽引する。同時に,導入する手法の基礎となる原理と技術を理解し,過去に収集したデータおよび評価基準との整合性を取ることが,一貫した環境管理と持続性の維持には不可欠である。