物理探査
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ラピッドレター
山葵沢地熱地帯におけるS波スプリッティング解析による不均質特性推定
森本 光貴, 吉光 奈奈
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2026 年 79 巻 p. 1-7

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抄録

 本研究では,地震波のS波が異方性媒質を通過する際に速い振動成分と遅い振動成分に分離するS波スプリッティング現象を既存観測網の記録に適用し,地熱発電所の稼働に伴う亀裂系の時間変化を評価した。解析は秋田県山葵沢地熱地域を対象とし,Hi-net雄勝観測点で2006年から2022年までに取得された32個の地震速度波形を用いた。S波部分に対して相互相関法を適用し,最大相関値から速いS波の振動方向と,2つのS波の到達時間差を推定した結果,2011年東北地方太平洋沖地震の前後で速いS波の振動方向が2方向から広域応力場と整合的な1方向(N70°E-N110°E)へと集約される明瞭な変化を得た。一方,スローネスは10 km以深の深部地震において全期間を通じて安定しており,巨大地震が地殻深部の既存亀裂の配向の再編を導いたことを示唆している。地熱発電所周辺については,2019年の稼働開始を境に到達時間差の平均値が約40%減少するとともに,発電所直下の浅部地震を用いて推定されたスローネスは深部地震に比べてばらつきを見せた。操業3年時点では貯留層の物理状態に決定的な変化は見られないものの,深部地震と比較した際に地熱貯留層による亀裂構造の擾乱が検出された。

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